1月、インフルエンザになってしまい1週間仕事を休んだ。高熱がひどく、ひたすら眠っていた。時間の経過がうそのようだ。カレンダーを見ても納得がいかない。

 ベッドから出るのは、水を飲むのと手洗いにいく時だけだった。片道10歩もないのに、グラグラと視界が揺れて、脳に打ち身ができたようだった。

高熱のせいで記憶が沸きたつのか、たくさんの悪夢にうなされた。眠りが浅くなるたびに「これは、あの時のことをクヨクヨ引きずっているんだな」とか「こんなような場面、確かにあったな、よく覚えていたな」と感心した。

 痛みを除けば、面白いこともなくはない。アルコールより効く。タバコ、アルコール、大麻、ドラッグに次いで、ウィルスを嗜好する文化がそのうちできるかも知れない。

瓶に入ったウィルスを経口摂取する。それから寝室で横になり、トリップするのを待つ。

いや、違うな。
電車の中で、おれの隣に立った男がそっとウィルスを差し出す。おれは無言で吸引する。すぐに効果は表れないが、効能は始まった。周りの人も、おれのおこぼれに預かる。みんな、翌朝目覚める時には、ばっちりキマっている。
おれたちは、ウィルスをそんなふうに流通させている。

 2日もまるまる寝ていると、症状はだいぶ軽くなった。さすがに悪夢もタネ切れらしく、内容が軽いものに変わってきた。

「砂浜に埋まっているバニラの求人トラックを見て『ここは地球だったのか』と気づく」という夢を見たが、これは伊集院光 深夜の馬鹿力のコーナーのネタだろう。
だいぶよくなってきたようだ。

駅前でフラなんて明るい催しも、悪夢