1週間で3キロ、2週間で5キロ痩せた。体調を崩して食事が喉を通らなくなって、体調が戻ってからも忙しく食事の時間がとれず食べそびれることが多かった。身体から消化中の食べ物が全部外に出た(要するにフンとして)重さも含めてだが、これほど体重を減らしたのは生まれて初めてで、面白半分になってきた。食べようと思えば食べられるし、美味しいものは美味しいのだが、食べる必要はないのだと気づいた。旅先で「この数日レコード聴いてないな」とふと気づくのに似ている。なきゃないで過ごしている。

 

体調が戻り始めた頃、出掛ける用事があった。身体をしめつけない楽な恰好がしたくオーバーオールを着て出掛けた。それが失敗だった。腹回りも痩せたからか、オーバーオールの内側で下着が下がる。
道の端をそろそろと歩いた。歩く振動で下着が完全に脱げた。オーバーオールを着ているので街中で醜い身体をさらす事態にはなっていない。だが街と自分の下半身の間に布一枚しかないのが、これほど心細いとは。早く人通りのない方へ行きたいのだが、下着が太ももをしばるゴム紐のようになっているので自然と歩幅も小さくなり、遅い。女性がスカートを履いて闊歩するのが、いかにたくましいことか。

 

古着屋があったので、試着室を借りて直すことにした。一応、買い物するつもりで見ようと何点か手に取る。試着室が空いていないのでうろうろしていると、女性店員が「ご試着されますか?」と話しかけてくれた。身体の正面を向けて話すのが申し訳なく、斜めを向いて答える。その店員が丁寧な方で、おれの正面に回りこんで会話を続けようとするので、おれはその場で少しずつ反時計回りに回った。
その後試着室で下着を直し、古着を購入して店を出た。