風呂からあがってベッドに腰かけ、汗がひくのを待っていた。すると、女がやってきた。だらしない下着姿で、尻は半分、出ている。トイレで読んでいた雑誌を、ベッドに放り投げ、隣に座り、テレビの音量を上げた。
あごを下げて口をポカンと開けて、テレビのほうをむいている。頭に釘を打ちこまれた鶏のような顔。
「水戸の偕楽園が今秋から有料化します」
「わたし梅は好き。秋は梅はないんだよ」
「AIで、人間の顔を生成することに成功しました。写真のように見えるこれらの画像、すべて実在の人物ではありません」
「絵をしりとりしたんだ」
気をひきたくて幼稚な物言いをしているのか、本物なのか、区別がつかない。
やわらかいベッドに座って、テレビを見ている。ビールを飲んで、女がいて、風呂に入って、何が気に食わないのだ。今日は、寿司も食ったのに。どうして、おれは笑っていないのだ。
おれは女を必要としていて、同時に憎んでいる。女の能天気さ、身勝手さに興奮し、腹をたてている。
女が「帰ったほうがいい?」と聞く。彼女を幼稚だと思ったのは間違いだった。中年女性らしく、不機嫌なつまらない男を気遣った。