戦争が終わって、平和になってよかった。戦争は恐ろしかった。今でも夢に出てくる。臭気と、炎の熱と音。目が覚めると、汗をびっしょりかき、拳を握りしめている。

 悪夢をくりかえし見るうちに、怯えるのとは違う、感情を抱く。口の中に、土の香りを思い出す。そして、鉄の味。

 自分の資産を喧伝するようになった。金を持っている、ということを宣伝するためにお金を使った。遠縁から相続した遺産、有名な絵画の売買、華やかな交友関係。

 ベッドで防犯カメラを眺めるのが愉しみになった。泥棒が入ってきたら、どう防衛するか、毎晩計画を立て、道具を揃える。相手は犯罪者で、私は被害者だ。多少、手荒な真似をしても正当防衛だろう。